価値あるものに対価を払う

2018年の3月のある日、朝のTVニュースが特集で高校生が仏像のレプリカを3Dプリンターで作成して地域の寺に無償で奉納したことを紹介していました。

 

高校生が自らの技術力で地域貢献をしたという美談として紹介されていましたが、私にとってはやや疑問の残るものでした。

 

事実誤認があれば訂正しますが、高校生たちが『無償で』作業に従事した、ということにどうも納得がいかないのです。

 

生徒たちが、仏像を作ることを通して3Dプリンターの技術を身につけるだけでなく、作ったことへの対価を得ることも学んで一区切り、という形が望ましい教育であったと感じます。

 

寺側(もしくは仏像のレプリカ作成を呼びかけた博物館側)は給料とまではいかなくてもお礼代は払うべきだったし、高校生側も仏像代と作成のために従事した労働力代を1円でもいいから請求すべきだったと思います。

 

もし給料をもらうことに後ろめたさを感じるのであれば、そのお金をそのままお賽銭箱に入れれば済む話です。

 

『無償の』地域貢献は一時の感動を呼ぶものではあっても、長続きするものとは思えません。

 

労働力のように目に見えず形のない価値、また仏像のように目に見え形のある価値に対価を払うから地域貢献の輪は回り、地域は活性化するのではないでしょうか。

 

『無償』や『ボランティア』は尊い響きを持つ言葉ですが、価値あるものに対価を払うという意識も醸造していきたいものです。

シリーズ『【アマチュア朗読】平家物語』始めました。

以前にNHK大河ドラマ平清盛』を褒め称える記事を書いて、DVDも全巻見終わった後、「あー面白かった。しかしこれで終わらせてなるものか。」という妙な気持ちになり、ついに自分自身で平家物語の朗読を始めることにしました。好事家とは恐ろしいものです。

 

nabepot.hatenablog.com

 

新作アップロードは毎週月曜18時00分を予定します。平家物語全12巻すべての段を朗読したら一体いつ終わることやら。

 

 

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十年早かったアニメ『電脳コイル』 (後編)

アニメの感想だけれども、出来得る限りネタバレはしません。このアニメを見た人にだけわかるように書きます。

 

主人公の名前は、・・・敢えて主人公A、主人公Bとします。

 

登場する小学生は割と等身大に描かれていて(ただし主人公Bはいわゆる中二病のような喋り方をする)、 主人公Aを始めとする小学生の心の機微がきちんと理解できます。また、ドメインやハッキングなどPC用語も当時の視聴者に媚びることなく出てきますが、それもストーリーの本格さを高めています。

 

 小学生が妙に幼く描かれていたり、脚本をわかりやすくするために演出がわざとらしいアニメやドラマを時々見かけますが、このアニメにはそういう要素が少なくて(ゼロとは言ってない)個人的には好感を持っています。

 

欲を言えば、後半になって重要となる兄弟と主人公Bがいつどのように出会いを果たしたか、に一話分割いてほしかったことと、 最終回の主人公Bの最後のセリフはもっとフツーでよかったかな、と思います。

 

最後の三話くらいは展開がめまぐるしいのでDVDを三回見直してやっと納得したり、最終回の主人公Bの最後のセリフを聞いて、「良いこと言ってるように見えるけど、結論逆だと思うけどな」となったりもしますが、鑑賞する価値アリなアニメです。

 

 

でもやっぱり放映が十年早かった!

豊島将之さんを応援する

※このブログは『Ak!ra WatanabeのBLOG』ですが、初代永世竜王の方とは全く関係のない将棋のアマチュアが書いているものなので悪しからず。表題の豊島将之八段とも一切関係のない人間です。

 

米長邦雄永世棋聖が著書の中で以下のように書いていた記憶があります。

 

「負けたときに受ける非難の声は勝ったときに得る称賛の声の比ではありません。」

 

勝負の世界、実力の世界とは厳しいものです。将棋界はその代表例でしょう。私はその中で豊島将之八段(2018年3月22日現在)を応援しています。

 

私は高校時代に一時期将棋を指していたことがあり、その際将棋年鑑棋譜を並べていたときに、

 

ゴキゲン中飛車居飛車穴熊で戦っている人がいる!しかも勝ちよった!」

 

という棋譜を発見しました。戦法の解説を詳しくはしませんが、ゴキゲン中飛車という戦法は、本来は相手の居飛車穴熊という囲いを使わせない戦法です。それに対して居飛車穴熊を巧妙に組んで勝ってしまったのです。

 

そんな芸当を見せつけてくれたのが豊島将之さん(当時何段だっけ?)でした。

 

彼が単に強いというだけでなく、作戦の中に他の棋士にはない閃きのようなものまで感じさせてくれるのです。

 

また、私の心に残るのは、2014年の羽生善治王座(当時)に挑戦した王座戦五番勝負の第四局です。

 

豊島七段(当時)はそこまで一勝二敗。王座戦は五番勝負なので、三回負けたらそこで挑戦終了です。迎えた第四局、先手番となった豊島七段は思い切った戦法を選択します。そして羽生善治王座のわずかな緩手を咎め、圧勝します。

 

あそこであの戦法をやってあの勝ち方か。かっこよすぎだろ。

 

私は豊島七段のファンになりました。結局第五局で敗れてその王座戦は豊島七段の挑戦失敗に終わりますが、それでも私はファンです。あれから時間が経ちましたが、これからも応援を続けたいです。

 

現在の豊島八段に頑張れ、だの、こうしろああしろ、などということは書けません。なぜなら既に頑張っていると思うし、我々アマちゃんが考え付くようなことはとっくにしていると思うからです。

 

 (追記

2018年7月17日

豊島八段はヒューリック杯棋聖戦五番勝負を三勝二敗で制し、棋聖位を獲得しました。本当におめでとうございます。もちろんこれからも応援します。

心ならずも京都大学工学部地球工学科に『合格』した方へ

京都大学工学部の入学試験では第二志望まで入学希望の学科を書くことができます。この制度のおかげで第一志望の学科で不合格でも第二志望の学科に合格できることがあります。

 

私が高校生の頃(2010~2013)、京都大学工学部地球工学科(以下地球工)は工学部の入学試験で合格最低点が最も低かった記憶があります。

 

よって当時(ひょっとしたら現在も)一部の予備校、進学校では京大工学部を受験する生徒に第二志望に「地球工学科」と書いておけ、と指示していたとお見受けします。

 

私の周りにも第一志望の物理工学科には落ちたが、地球工には受かっていたのでそのまま入学した、という人がいました。

 

その人の話から察するに、第二志望を地球工学科にしたのは、そこに対する興味というよりは合格しやすいから、という理由でした。

 

学生の立場としては、とっとと受験を終わらせて大学に入りたい(第一志望に入れなかったのは残念ではあったが)。

高校(特に私立)や予備校の立場としては、京都大学の合格実績を一人でも上げたい。

京都大学工学部の立場としては、少しでも入試の点数が高い学生を入学させたい。

 

三者による上記のような思惑が悪いとは思いません。それどころか各者とも自然な判断をしています。

 

しかしそれが地球工をどのようにしてしまうか、想像してみて下さい。

 

 

 

第一志望の学科に入れず、悔しい思いをして新学期を迎える方に以下を伝えておきたいです。

 

本当に悔しいなら3年間準備して大学院の入学試験で勝て。その根性がないのなら覚悟決めて地球工できちんと頑張れ。

 

 

 

 

 

 

まことにおもしろき『平清盛』

2012年のNHK大河ドラマは『平清盛』でした。

 

あらすじを簡単に書きますと、平安時代末期、白河院白河法皇)の落とし胤として生まれた平太(へいた)が平氏の棟梁平忠盛(たいらのただもり)の子として育ち、後に来たる「武士の世」の礎を築く物語です。

 

清盛は、自分の出生の秘密に苦しんだり、堕落した皇室や藤原摂関家の横暴な振る舞いに憤りながらも、退廃的でつまらなき時代をおもしろく生きようと奔走します。

 

このドラマでは、時が流れるにつれて権力の居処が移り変わり、その中の登場人物たちの心のすれ違いやその悲しみが事細かく描かれていきます。

 

全体的に明るい話ではありません。家族がお茶の間に揃って和気藹々と見るようなドラマではないかもしれません。

 

しかしこの作品では、生きること、というテーマが力強く貫かれているような気がします。

 

 

それこそ私にこのドラマの価値を見出させ、卒業論文を書き終えた私を家から遠いTSUTAYAまで駆り出させたものなのです。

十年早かったアニメ『電脳コイル』(前編)

大学一年の頃(2014年)、留学生の友達からPranav Mistry のプレゼンテーションを紹介され、衝撃を受けました。

Pranav Mistry: The thrilling potential of SixthSense technology | TED Talk

 

これは、2009年にTEDで発表されたVR、AR、MR技術についてのプレゼンです。これを見た私は、

 

ゲッ、2009年の時点でMITにこんな技術があったのか、おったまげー

 

状態でしたが、三年後大学四年生(2017年)になり、不意に気になって見た『電脳コイル』でさらに、

 

え!? 2007年の時点でNHKがこんなアニメを放送してただと!? おったまげー

 

状態になりました。

このアニメは、主人公を含む小学生たちの間で電脳メガネというウェアラブル端末が流行し、それが当たり前のように活用されている近未来(2026年)の物語です。

ストーリーの感想はまたの機会にしますが、何よりの感想は

 

2007年にこのアニメについて行くことのできる視聴者が何人いたか?!

 

ということです。