読書感想文『人間の建設』(岡潔・小林秀雄)[新潮社]その一
数学者・岡潔と評論家・小林秀雄の1965年(昭和40年)の対談。含蓄のある対談(雑談?)なので何回かに分けて思ったことを書いてみます。
*学問をたのしむ心
対談は二人が来る途中の自動車の中でしていた話の続き、という形で始まります。
小林は、学問が好きになるような教育とはむずかしいことが面白いという教育であり、教育はそうあるべきであると主張します。
そこで私は以下のことを思いました。
子供に科学の楽しさもしくは数学の楽しさを知ってもらう目的で科学マジックだったり数学マジックなるものを披露してくださる学者たちをテレビで見かけることがあります。それはそれで否定されるものではありませんが、それだけでは不十分でしょう。
科学や数学は奥へ進めば進むほど内容が複雑化、抽象化します。それなのにただ子どもの時に見た科学実験や数学パズルが面白かったという理由だけでこの複雑化・抽象化を乗り越えようとする人は少ないでしょう。内容が難しくなっていく、そのこと自体を面白いと思えるからこそ先へ進むことができるのです。ここで小林の言う「むずかしいことが面白い」とはこのことを指しているのかな、と思います。
「分かりやすく説明」だとか「すぐ分かってすぐ使える!」だとかいう文句も全てが悪しきものだとは決して思いませんが、「むずかしくてわかりづらいこと」を脳みそに汗かいて身にしみこませることも必要でしょう。